救急救命士について
救急救命士
一昔前、救急車はただの病院までの運び屋とまで呼ばれてました。CPA患者を前に車内で何も処置を行えなかった隊員は、なんとも言えない日々を送っていたようです。しかし今は違います。
平成3年4月23日に「救急救命士法」が公布され、8月15日に施行。
救急隊員の観察・処置の範囲を拡大。救命士は病院到着まで車内で患者に救命処置を行えることになり、医師に近い存在になったのです。
同じ救急隊員でも取得資格が異なる
☆救急T課程修了者 ・・・消防学校において、135時間以上の教育を受けた者
☆救急U課程修了者 ・・・消防学校において、救急T課程の資格を有する者が、
更に115時間以上の教育を受けた者
☆救急標準課程修了者・・・消防学校において、250時間以上の教育を受けた者(T課程+U課程修了者)
☆救急救命士 ・・・救急U課程または救急標準課程の資格を有する者が5年以上、
もしくは2000時間救急業務に従事した後、
厚生労働省が指定する学校で835時間以上の教育を受け、
厚生労働省が実施する国家試験に合格した者
それぞれの資格での処置範囲の違い
救急T課程修了者 |
・用手法による気道確保
・骨折の固定
・ハイムリック法および背部叩打法による異物の除去
・体温・脈拍・呼吸数・意識状態・顔色の観察
・胸骨圧迫心マッサージ
・呼気吹き込み法による人工呼吸
・圧迫止血
・必要な体位の維持、安静の維持、保温
・口腔内の吸引
・経口エアウエイによる気道確保
・バックマスクによる人工呼吸
・酸素吸入器による酸素投与 |
救急U課程修了者 |
・救急T課程修了者が実施できる応急処置
・聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取
・血圧計の使用による血圧の測定
・ショックパンツの使用による血圧の保持および下肢の固定
・心電図装置の使用による心拍動の観察および心電図伝送
・鉗子・喉頭鏡による異物の除去
・経鼻エアウエイによる気道の確保
・パルスオキシメーターによる血中酸素飽和度の測定
・自動式心マッサージ器の使用による胸骨圧迫心マッサージの施行
・特定在宅療法継続中の傷病者の処置の維持 |
救急標準課程修了者 |
救急救命士 |
・救急U課程、救急標準課程修了者が実施できる応急処置
・精神科領域の処置
・小児科領域の処置
・産婦人科領域の処置
・心室細動(Vf)、無脈性心室頻拍(Pulseless VT)発生時に、半自動式除細動器による除細動の実施
除細動は2003年4月に処置範囲拡大により、医師の包括的指導の下[事前の勉強や研修を充分に受けること]で救急車内で医師の指示なしで実施できるようになった。
CPA(心肺停止)患者に限り、医師の指示の下で実施できる行為(特定行為)
・厚生労働大臣の指定する薬剤(乳酸加リンゲル液)を用いた静脈路確保のための輸液
・厚生労働大臣の指定する器具(食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク)による気道確保
・気管内挿管(2004年7月1日処置範囲拡大) |
*特定行為・・・★厚生労働大臣の指定する薬剤(乳酸加リンゲル液)を用いた静脈路確保のための輸液
[平成18年度にはエピネフリン(心拍再開に資する強心剤)の使用が認められる予定である]
★厚生労働大臣の指定する器具(食道閉鎖式エアウェイ、ラリンゲアルマスク)による気道確保
★気管内挿管
救急救命士の国家試験受験資格
厚生労働省のホームページ内で定義されています。こちら
救急救命士による気管内挿管問題
2001年10月、秋田市消防本部の救急救命士が患者に、医師しか行えない気管内挿管(チューブを挿入して気道を確保すること)を行ったことが議論の発端となった。(この救命士は医師の指導をしっかりと受けており、その挿管技術は申し分なし)。
救急救命士が気管内挿管を行ったことは、法を逸脱した行為と問題視される一方、処置を受けた患者が一命を取り留めたという事実があった。
医師でもない救命士が気管内挿管を行うことはまかりならんと救急現場側と日本医師会が対立。さらにその後何度も議論を重ね認められた。
救急救命士によるCPA患者への気管内挿管は、2004年3月に厚労省令が改正され、7月1日から解禁。救命士も消防学校等で講習を受け、病院で30例以上の実習経験を積めば挿管できることになったことから、気管内挿管の実施に必要な病院実習が始められている。
東京消防庁管内では10隊の救急隊が気管挿管可能隊として運用開始。
救急救命士が乗車する高規格救急車とは
高規格救急車は標準、U課程修了者が行える応急処置や、救急救命士の行う救命処置を十分に行えるように作られた救急車のことです。
従来は2B型(普通型)救急車と呼ばれ、救急用資器材は酸素吸入器・心電計・血圧計・喉頭鏡やストレッチャーなど基本的な装備のみでした。
高規格救急車の最大の特徴は、2B型と比較して車体が大きく、高度な資器材が搭載されています。救命処置を行うため、可能な限り迅速で、安全に処置を行なうために救急車の室内は広く設計されています。また、重症の傷病者を取り扱うことを考慮して、ストレッチャーを固定する装置は、振動をそこそこ吸収できる機能となっています。
まだ高規格救急車が少ない消防では、CPAと判断された場合、2B型と高規格救急車が同時出動して2B型から高規格救急車に患者の移動がよく行われています。
なぜすべてを高規格救急車にできないのかというと、近年の財政問題にあります。小規模な消防組織ではなかなか予算が捻出できません。高規格救急車は購入に概ね3000万円ほどかかり、なんと2B型の1000万円の3倍です。
救命率の向上には高規格救急化が必須なのですが・・・
追記:最近は高規格救急車の購入の際、補助金が出るそうです。今後は高規格化が進むはず。
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