人工心肺蘇生法(Cardio Pulmonary Resuscitation)


CPR実施までの流れ

1.意識を確認する

まず、意識の有無を調べる為に声をかけます。
額に手を当て、耳元で名前を呼ぶと同時に肩を叩いてみます、最初は小さな声で徐々に大きな声で呼びかけ、肩をたたく強さも徐々に強くします。
全く反応がない時は『意識無し』と判断できます。
ここで大切な事は、意識の無い相手に対しても、励ましたり、声をかけたりする事です、間違っても絶望的なことを口に出してはいけません、意識が無くても聞こえている場合があるからだそうです。


2.口の中を確認する

口の中に異物などがつまっていないか確認します。
口の周囲や衣服に、嘔吐物などがついている場合は特に注意して確認する必要があります。
何か詰まっているようであれば、首をゆっくり横に向け、指にハンカチなどを巻いて掻き出します。
これ以外に、背部叩打法と言って、背中(肩甲骨と肩甲骨の間)を叩く方法もあります。
指を入れてもとれない場合などに有効なようです。


3.気道を確保し、呼吸の確認を行う

口の中に何も無いようであれば、気道の確保を行います。
意識が無いと、舌が喉の奥に落ち込んで空気の通り道を塞いでしまいます、これを防ぐために、右手を額に当てて頭を後ろに反らせ、左手で顎先を上方へ持ち上げます。(自分が左側に位置している場合)
これを顎先挙上法(あごさききょじょうほう)と呼びます。

その状態で耳と頬を相手の口と鼻に近づけ、空気の出入りや吐息をによって呼吸の有無を調べます。
胸の動きが無く、吐息を感じない時は『呼吸が無い』と判断できます。


4.人工呼吸を行う

呼吸が無い場合、気道を確保したままで右手の親指と人差し指で鼻をつまみ、息を吹きこみます、吹きこむ量は胸が軽く膨らむ程度で良いようですが、 ここで大切な事は、胸が上下するかを確認する事です、気道確保がうまくいっていない状態では、胸が上下しません、もう一度口の中を確認する必要があります。

吹きこみ回数
大人 5秒に1回
子供
1〜10歳
4秒に1回
乳児
1歳未満
3秒に1回


5.脈拍を確認する

脈拍の確認は頚動脈(首の動脈)で確かめます、自分の頚動脈の位置を確認しておくと良いでしょう。
5秒間観察し、脈拍を感じない時は『脈拍が無い』と判断できます。
これも気道を確保したままで行います、また、一歳未満の乳児の場合、頚動脈での確認が困難な場合が多い為、大腿動脈で確認すると良いようです、場所は足の付け根あたりです。


6.心臓マッサージを行う

脈拍が確認できなければ、心臓マッサージを行います。
みぞおちから3cm程度上の部分に片手を置き、さらにもう一方の手を重ねます、そして手のひらの根本の部分で15回圧迫します。
この時、肘を曲げず、垂直に圧迫する必要があります。(垂直に圧迫するコツとして、圧迫部位を見るのではなく、それよりも先を見るようにすると良い)
また、やわらかいベッドの上などでは効果が半減してしまうので注意して下さい。

圧迫位置の確認の仕方
・胸部の側方の肋骨の縁に人差し指と中指の2本の指を置く。
・2本の指を、肋骨の縁に沿って剣状突起と肋骨縁で作られている切痕に達するまで中央に移動させる。
・さらに中指を切痕まで進めると、人差し指は胸骨の上に置かれた状態になる。
・この人差し指の置かれた胸骨の頭側の部分が圧迫部位となる。
・胸骨のまん中の位置にもう一方の手の付け根を当てる。

心臓マッサージ回数 心臓マッサージ深さ 方法
大人 80〜100/分 3.5〜5cm 両手で肋骨の下半分を圧迫
子供
1〜10歳
80〜100/分 2.5〜3.5cm 片手で肋骨の下半分を圧迫
乳児
1歳未満
100〜120/分 1.5〜2.5cm 指2本で両乳首を結んだ線から指1本分下を圧迫

乳児の圧迫方法は、両乳首を結んだ線のまん中に人差し指を置き、圧迫する時にはその人差し指を外します。


7.呼吸も脈拍もなかった場合、CPRを行う

呼吸も、脈拍も感じなければCPRを行います。
これは、人工呼吸と心臓マッサージを交互に繰り返すものです。
CPRを4〜5サイクル行った後、もう一度『呼吸の確認』、『脈拍の確認』を行います。
ここで注意しなければならないのは、人工呼吸、心臓マッサージの重要ポイントを外さない事です、 人工呼吸時に鼻をつまむ事を忘れてしまう、気道確保がうまく行かない、心臓マッサージの圧迫点がずれてしまう等。
心臓マッサージの圧迫位置は毎回確認する必要がありますので注意して下さい。

比率(心臓マッサージ:人工呼吸)
大人 15:2
子供
1〜10歳
5:1
乳児
1歳未満
5:1

乳児は鼻と口を同時にくわえて吹きこみます


1秒でも早く開始する

負傷者は動かしてはいけないよく言われますが、「意識も呼吸も脈も無い人」は別です。そのままにしておいたら確実に死亡してしまいます。 救急隊員が到着するまでの間、そのような人に何もしないよりは、何かした方がまだ助かる確率があるのです。

ただし、CPRを行なえば、必ず助かるわけではありません。心停止から3分以上たつと蘇生率は50%を下回ります。
救急隊が到着するまでには平均6分程度かかるのですから、何もしなければ必然的に助かる確率が低くなるのです。
また、結果として助かったとしても、脳にダメージが残ることも考えられることから、CPRは1秒でも早く開始する必要があります。



図.カーラーの救命曲線(改変)

〔1〕心臓停止後約 3分で50%死亡
〔2〕呼吸停止後約10分で50%死亡
〔3〕多量出血後約30分で50%死亡

救命講習会

救命講習を受けるためには、地元の消防署に問い合わせてみるのが一番です。
また、日本赤十字社も講習を実施しています。


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